釣ったイカを丸ごと使って食べ応えのある一品にしたいなら、甘辛い煮汁でもち米を炊き上げるイカめしがおすすめです。
イカめしは北海道・道南で親しまれてきた郷土料理で、イカの胴を袋のように使い、もち米を詰めて煮るのが基本です。イカのうま味を吸ったもち米はもっちりし、外側のイカにはしょうゆベースの煮汁が染み込みます。
家庭で失敗しやすいのは、もち米の芯が残る、胴が破れる、煮汁が濃くなりすぎるという3点です。特に大切なのは、もち米をあらかじめ浸水し、胴へ詰めすぎず、弱火でゆっくり中まで加熱することです。
この記事で分かること
- イカめしの基本材料と調理の全体像
- 胴を破らずに内臓・軟甲・目・くちばしを処理する方法
- もち米の浸水と水切りの考え方
- もち米を詰めすぎて破裂させない量の見極め方
- もち米に芯を残しにくい煮方と火加減
- イカの大きさが違うときの調整方法
- 破裂・芯残り・味が濃いなどの失敗対策
- 保存、温め直し、釣ったイカを使うときの衛生上の注意点
イカめしの材料
以下は小〜中型のイカ2杯、3〜4人分を想定した分量です。胴の大きさによって入るもち米の量が大きく変わるため、用意した詰め物を無理に使い切る必要はありません。
| 材料 | 分量 | ポイント |
|---|---|---|
| イカ | 小〜中型2杯 | 胴を筒状のまま使えるもの |
| もち米 | 80〜100g程度 | 全部を詰め切らず、胴の容量に合わせる |
| イカのゲソ | 1〜2杯分 | 5〜10mm程度に刻む。余りは煮汁で一緒に煮てもよい |
| にんじん | 20g | 好みで。細かく刻む |
| 干ししいたけ | 1枚 | 好みで。戻して細かく刻む |
詰め物の下味
- しょうゆ:小さじ1
- 酒:小さじ1
基本の煮汁
- 水またはだし汁:600ml
- しょうゆ:大さじ3〜4
- 酒:大さじ3
- みりん:大さじ3
- 砂糖:大さじ2
- しょうが:10〜15g
甘めが好きなら砂糖を少し増やし、すっきり仕上げたい場合はしょうゆを大さじ3から始めます。煮詰まると味は濃くなるため、最初から濃い煮汁にしすぎない方が調整しやすいです。
用意する道具
- 爪楊枝または竹串
- イカが重ならずに入る鍋
- 落とし蓋
- キッチンペーパー
- スプーンまたは小さじ
まず覚えたいこと:イカめしは「もち米を使い切る料理」ではありません。胴の中へ余裕を残すことを優先し、余ったもち米は別に蒸す・炊くなどして使います。
イカめしの基本の作り方
詳しい工程の前に、料理全体を確認します。釣った丸のイカから作る場合は次の8ステップです。
- 浸水:もち米を洗い、1〜2時間を目安に水へ浸してからざるでしっかり水切りします。
- 下処理:イカの胴から内臓とゲソを抜き、透明な軟甲を取り除きます。
- ゲソを整える:目・くちばし・硬い吸盤を処理し、使う分を細かく刻みます。
- 詰め物:もち米、ゲソ、好みの野菜、少量のしょうゆ・酒を混ぜます。
- 詰める:胴の半分前後を目安に、押し固めず余裕を残して詰めます。
- 閉じる:胴の口を爪楊枝で留めます。
- 煮る:煮汁を沸かしてイカを入れ、落とし蓋をして弱火で30〜40分を目安に煮ます。
- 休ませる:もち米に芯がないことを確認し、煮汁の中で少し休ませてから切り分けます。
詳しい作り方|釣ったイカの下処理から煮上げまで
1.もち米を洗って1〜2時間浸水する
もち米をやさしく洗い、たっぷりの水へ浸します。このレシピでは1〜2時間を基本にすると準備しやすく、煮たときの芯残りも抑えやすくなります。
浸水方法には、1時間程度から数時間、一晩までさまざまな作り方があります。重要なのは、使うレシピの浸水時間と煮時間をばらばらに組み合わせず、一つの方法として通して作ることです。
- もち米へ水を加えて軽く混ぜ、最初の水は早めに捨てます。
- 米粒を強くこすらず、2〜3回水を替えながら洗います。
- たっぷりの水へ1〜2時間浸します。
- ざるへ上げ、20〜30分ほど置いて余分な水を切ります。
暑い時期に長く浸水する場合は、室温へ放置せず冷蔵庫で行います。浸水後に水が多く残っていると、詰め物の味が薄まりやすいため、水切りまでを下準備として考えてください。
2.胴を破らずに内臓とゲソを抜く
イカめしでは胴を袋として使うため、胴を開かず筒状のまま下処理します。
- 胴の内側へ指を入れ、胴と内臓がつながっている部分をやさしく外します。
- 目の上付近を持ち、ゲソと内臓をゆっくり引き抜きます。
- 胴の中に残った透明な軟甲をつまみ、まっすぐ抜きます。
- 胴の中を冷たい水で手早く洗います。
- キッチンペーパーで内側と外側の水気を丁寧に拭きます。
勢いよく引くと内臓が途中で切れたり、胴の入口が裂けたりします。引っ掛かりを感じたら力で抜かず、指でつながりを外してから進めます。
小さな傷にも注意
胴に穴や深い切れ目があると、加熱でもち米が膨らんだときに裂けやすくなります。大きく破れているイカは、無理にイカめしへ使わず炒め物や煮物などへ回す方が作りやすいです。
釣ったイカは、料理を始めるまでの冷却も大切です。持ち帰り方から確認したい場合は以下の記事も参考にしてください。

3.ゲソの目・くちばしを取り、細かく切る
ゲソと内臓を分け、目、中央の硬いくちばし、気になる硬い吸盤を取り除きます。洗った後は水分を拭き、詰め物へ使う分を5〜10mm程度に刻みます。
ゲソをすべて入れる必要はありません。詰め物が増えるほど胴へ入るもち米の量が減るため、小型のイカならゲソの一部を煮汁で一緒に煮るか、別料理へ使うと調整しやすくなります。
4.もち米とゲソ、好みの具材を混ぜる
水切りしたもち米へ、刻んだゲソ、にんじん、戻したしいたけを加え、しょうゆ小さじ1と酒小さじ1を混ぜます。
具材は入れすぎない方が失敗しにくく、初めてならもち米+ゲソだけでも十分です。にんじんやしいたけを入れる場合は細かく刻み、余計な水分を拭いてから混ぜます。
5.胴の半分前後まで、押し固めずに詰める
最重要ポイントです。スプーンで少量ずつ入れ、外側から軽く整えながら奥へ送ります。米粒を押し固めず、胴の中へ明らかな余裕を残します。
詰める量はイカの種類、大きさ、胴の太さ、具材量によって変わります。家庭では胴の半分前後を一つの目安にし、細身のイカや膨らみやすい詰め物ならさらに少なめから始めると安全です。
満杯にしない
もち米は煮汁を吸って大きく膨らみます。生の状態で胴がパンパンなら、加熱時に逃げ場がなくなります。
「まだ入りそう」と感じるところで止め、用意した詰め物が余っても問題ありません。
6.爪楊枝で口を閉じる
胴の口を平らにし、爪楊枝を横方向へ通して閉じます。口ぎりぎりまで米が入っている場合は、留める前に少し取り出して空間を確保します。
調理前に使った爪楊枝の本数を数えておき、切り分ける前にすべて回収してください。
7.煮汁を沸かし、弱火で30〜40分を目安に煮る
鍋へ水またはだし汁、しょうゆ、酒、みりん、砂糖、薄切りのしょうがを入れて火にかけます。ひと煮立ちしたらイカを並べ、落とし蓋をして静かに沸く程度の弱火にします。
途中で1〜2回上下を返すと、煮汁が均等に回りやすくなります。煮汁が減りすぎた場合は、熱い水またはだし汁を少量足してください。
| 状態 | 調整 |
|---|---|
| 小さめ・細身のイカ | 30分前後からもち米の状態を確認する |
| 中型で胴が厚い | 35〜40分を目安にし、時間だけでなく中心を確認する |
| 煮汁が急速に減る | 火を弱め、熱い水・だしを少量追加する |
| 表面だけ色が濃い | しょうゆの色だけで完成と判断せず、もち米の芯を確認する |
強火で激しく沸騰させると、胴が鍋の中で動き、裂れたり煮汁が急に詰まったりしやすくなります。煮込み中は火元から離れず、鍋の状態を確認してください。
8.もち米の芯を確認し、煮汁の中で休ませる
時間になったら、胴の口に近い部分から米粒を少量取り出して食感を確認します。中心に硬い芯が残る場合は、煮汁を補いながら5〜10分ずつ追加加熱します。
火が通ったらすぐ切らず、火を止めて煮汁の中で15〜30分ほど休ませます。少し落ち着かせることで、切ったときにもち米が崩れにくく、味もなじみやすくなります。
9.爪楊枝を外し、少し冷ましてから輪切りにする
熱々の状態では中のもち米が動きやすく、切り口が崩れやすくなります。触れられる程度まで落ち着かせ、爪楊枝をすべて抜いてから1.5〜2cm程度の輪切りにします。
包丁は前後へ大きく押し引きせず、切れ味のよい刃で一切れずつ切ります。盛り付け後に煮汁を少量かけると照りが出ます。
イカめしをふっくら仕上げる5つのコツ
もち米は浸水と水切りをセットで考える
浸水不足は芯残りにつながりやすく、反対に水切りが甘いと詰め物が水っぽくなります。「浸す」だけでなく、ざるへ上げて水を切るところまで準備に含めます。
詰める量を欲張らない
レシピによって1/3、半分弱など目安に幅があるのは、イカの形や米・具材の配合が違うためです。数字を絶対視するより、胴の中へ十分な膨張スペースが残っているかを優先してください。
煮汁はイカへ回る量を確保する
もち米はイカの胴の中で煮汁の水分を吸って火が通ります。煮汁が少なすぎて鍋底だけに残る状態では芯が残りやすくなるため、落とし蓋を使って上側まで煮汁を回します。
強火で煮詰めない
表面へ早く色を付けるより、中のもち米へ水分と熱を届けることが先です。煮立った後は弱火へ落とし、必要なら最後にイカを取り出してから煮汁だけを少し煮詰めます。
切る前に少し休ませる
煮た直後はイカももち米も非常に熱く、切り口も崩れやすい状態です。煮汁の中で休ませると、味がなじみ、輪切りもしやすくなります。
イカの種類・大きさでどう変える?
スルメイカ、ヤリイカなど、胴を筒状のまま使えるイカなら作れます。ただし同じ「2杯」でも胴の容量は大きく違うため、もち米の量より詰め率を優先します。
| イカの状態 | 作り方の調整 |
|---|---|
| 小型のイカ | 具材を減らし、米も少なめに詰める。早めに火通りを確認する |
| 胴が太いイカ | 詰めすぎに注意し、中心のもち米まで火が通る時間を確保する |
| 冷凍・解凍したイカ | 冷蔵庫で解凍し、ドリップを拭き、胴に裂け目がないか確認する |
| 胴が大きく破れている | 無理に詰めず、炒め物・煮物・塩焼きなどへ用途変更する |
よくある失敗と直し方
| 失敗 | 主な原因 | 対処 |
|---|---|---|
| もち米に芯が残る | 浸水不足、煮時間不足、煮汁不足 | 熱い水・だしを少量足し、落とし蓋をして5〜10分ずつ追加加熱する |
| 胴が破れる | 詰めすぎ、胴に傷があった、強い沸騰 | 次回は詰め量を減らす。調理中に裂れた場合は弱火にし、中まで火を通して崩れイカめしとして盛る |
| 味が濃すぎる | 強火で煮汁が減りすぎた | 途中なら熱い水・だしで薄める。次回はしょうゆを控えめから始める |
| イカが硬い | 煮汁が減った状態で長時間加熱した | 煮汁量を保ち、米が煮えた後は必要以上に煮続けない |
| 切ると米がこぼれる | 熱々で切った、米がまだ硬い、包丁を強く押した | 少し休ませ、芯がないことを確認し、切れ味のよい包丁で輪切りにする |
イカめしのアレンジ
ゲソ入りのシンプルイカめし
初めてなら、もち米と細かく刻んだゲソだけにすると詰め量を調整しやすく、イカそのものの味も分かりやすくなります。
五目風
にんじん、しいたけ、ごぼうなどを細かく刻んで加えます。具が増えた分だけもち米を減らし、胴全体の詰め量が増えないようにしてください。
もち米とうるち米を混ぜる
もち米だけの強い粘りが好みでない場合は、うるち米を混ぜる方法もあります。もち米100%より軽い食感になり、冷めたときの食感も変わります。
仕上げに煮汁を煮詰めて照りを付ける
中まで火が通ったイカめしを取り出し、煮汁だけを少し煮詰めて上からかけると、照りのある仕上がりになります。イカ本体を濃い煮汁の中で長く煮続けないのがポイントです。
釣ったイカで作るときの安全・衛生上の注意点
釣った後から調理まで冷たい状態を保つ
加熱料理でも、持ち帰るまでの温度管理が不要になるわけではありません。釣ったイカは早めに冷やし、帰宅後も常温へ長く置かず下処理または冷蔵・冷凍します。
生のイカに触れた器具を完成品へ使い回さない
生のイカを置いたまな板、包丁、キッチンバサミ、皿は洗浄してから再使用します。煮上がったイカめしを、生のイカを置いていた皿へ戻さないでください。
中心まで十分に加熱する
イカの外側が濃く色付いても、胴の中のもち米が十分に加熱できているとは限りません。米に芯がないことを確認し、加熱調理の安全目安として中心部75℃で1分間以上を意識します。
常温へ長く置かない
イカめしは魚介と米飯を組み合わせた料理です。食べない分を鍋のまま室温へ長時間置かず、粗熱を取ったら小分けにして速やかに冷蔵または冷凍します。
爪楊枝は切る前にすべて外す
使った本数を覚えておき、盛り付け前にすべて回収します。特に子どもや高齢者へ出すときは、破片が残っていないことも確認してください。
保存と温め直し
冷蔵するとき
食べない分は室温へ長時間放置せず、粗熱を取って清潔な容器へ入れ、早めに冷蔵します。米飯類は作り置きを長く引っ張らず、できるだけ早く食べ切るのが基本です。
冷凍するとき
完全に冷めてから食べやすい量に分け、ラップで包んで冷凍用保存袋へ入れます。食感を優先するなら長期保存せず、早めに使い切ってください。
温め直すとき
切り分けたイカめしを耐熱容器へ入れ、煮汁または少量の水をかけてふんわりラップをし、電子レンジで短時間ずつ加熱します。鍋なら少量の煮汁を加え、蓋をして弱火で温めます。
イカめし作りにあると便利な道具
胴を筒状のまま残す料理なので、ゲソや目の周辺だけを切り分けやすいキッチンバサミがあると下処理を進めやすくなります。

また、イカの胴とゲソを広げられる作業面があると、下処理と水分拭き取りがしやすくなります。魚介のまな板を選ぶポイントは以下で確認できます。

よくある質問
もち米は一晩浸水しないと作れませんか?
一晩浸水する作り方もありますが、必須ではありません。このレシピでは1〜2時間を基本にし、その分30〜40分ほど弱火で煮て中心を確認します。長く浸水する場合は冷蔵庫を使ってください。
普通のお米でも作れますか?
作れます。うるち米だけではもち米100%より粘りが弱く、切ったときにほぐれやすくなります。初めてなら、もち米へうるち米を一部混ぜる方法が扱いやすいです。
もち米は何割まで詰めればよいですか?
イカの大きさや米の配合で変わるため、絶対の割合はありません。初めてなら半分前後から始め、押し固めず、胴の中へ十分な余白を残してください。小さなイカではさらに少なめにします。
皮はむいた方がよいですか?
どちらでも作れます。皮を残せばイカらしい色が出やすく、むけばすっきりした見た目になります。皮むきで胴を傷つけそうなら、無理にむかずそのまま使って構いません。
冷凍したイカでも作れますか?
作れます。冷蔵庫で解凍し、胴の内側と表面のドリップを丁寧に拭きます。解凍時に胴が大きく裂れていないかも確認してください。
圧力鍋でも作れますか?
圧力鍋でも作れますが、必要な水分量や加圧時間は製品ごとに異なります。通常鍋の時間をそのまま置き換えず、使用する製品の取扱説明書にある魚介・米料理の条件を優先してください。
まとめ|イカめしは「浸水・詰めすぎない・弱火」が基本
釣ったイカで作るイカめしは、胴を破らずに下処理し、浸水したもち米を詰め、甘辛い煮汁でゆっくり炊き上げる料理です。
成功のポイントは、もち米をあらかじめ浸水すること、胴へ満杯に詰めないこと、弱火で中心まで煮ること。外側の色ではなく、最後にもち米の芯がなくなったかを確認すれば失敗を減らせます。
釣ったイカが複数ある日は、イカめしだけでなく、煮物や塩焼きなど調理法を分けると、大きさや状態に合わせて無駄なく楽しめます。
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